【書評】橋下徹「交渉力」結果が変わる伝え方・考え方

ボクが橋下徹さんを知ったのは、
「行列のできる法律相談所」というTV番組に弁護士で出演されているのを観てからだ。
そのときの印象は、 軽いノリの弁護士だなあくらいに思っていた。
当時の橋下さんは、茶髪で下ネタやギャグも披露するチャラい感じで、
同じく弁護士として出演していた丸山和也さんという、おじさんと並んでキャラが際立ってはいたと思う。
その橋下さんが選挙を勝ち抜いて大阪府知事になったときも、
タレント人気ってすごいな、というようにその実力や努力を知る由もなかった。

しかし、YouTubeで発見した、大阪市長時代の橋下さんが囲み取材でテレビ局・新聞社の記者たちを論破する様子を見てからは印象が変わっていった。

一流メディアの記者たちさえ、橋下さんの囲み取材や記者会見では、重苦しい雰囲気でピリピリと緊張しているのだ。
中途半端な質問をしたら、橋下さんにたちまち論破され、ときに怖いもの知らずの記者が意地悪な質問をしようものなら、百倍返しくらいのカウンターロジックをくらい、自分のトンチンカン具合を晒されて大恥をかくのだ。

「この人の頭の回転速度どうなってんだ‥?」

というわけで、以前より気になっていた人、橋下徹さんの著書「交渉力」結果が変わる伝え方・考え方を読んでみました。

成功する交渉とは

成功する交渉は準備で決まる。
それは、
交渉の前に自分の「絶対に譲れない要望」と「譲歩できる要望」を徹底的に整理できているかどうかだ。

そして相手との会話のなかで、相手の 「絶対に譲れない要望」と「譲歩できる要望」を整理しながら交渉すること。

なぜなら交渉とは、お互いの「譲歩」をし合うプロセスであり、
その「譲歩」のカードを切り合うことで成立するからだ。
なので「自分が絶対に譲れない要望」を整理し、交渉で「自分が絶対に譲れない要望」が確保できれば、他の要素はいくらか「譲歩」したとしても、その交渉は成功となる。

交渉の名手 トランプ & 金正恩

また、交渉の名手として、アメリカのトランプ大統領や、北朝鮮の金正恩を引き合いに出し、いかに両代表が「絶対に譲れない要望」を確保するために「譲歩」を演出し、その交渉の極意を駆使しているかの解説は時事問題とからめて行動原理がよくわかり、納得感がある。

しかしながら、金正恩が本書で解説されているような、交渉の名手と橋下さんが評価していることは意外なところであった。ミサイル開発に血眼になっていたのも北朝鮮という小国であるが故に考え抜いての行動であるようだ。

抽象的な議題を “要素に分解して” 具体的な議論にしていく

本書で紹介されていた交渉を成功させる例として、ポスターデザインについて触れられていた。デザインという抽象的な問題では、「A案を推す人」と「B案を推す人」で意見が分かれたときに、個人の美的な好みや感覚という抽象的な議論を展開してしうと、意見は平行線になる。
そこで、「広告の色」、「写真の選定」、「モデルの視線」、「文字の種類・サイズ」などの要素に分解し、その分解されたパーツ(要素)ごとに「絶対に譲れないもの」「譲れるもの」を整理して、優先順位を付ける。

要素に分解し議論することで、

「文字の大きさは譲れない」

「モデルは絶対にこの人がいい」

「背景の色は変えていい」

「キャッチコピーは目立たせたいから、文字の大きさは譲れないけど、写真はこれでもいい」

という具合に、具体的な議論へと絞りこまれていく。

交渉の極意が満載

橋下徹さんのキャリアは交渉の連続だった。弁護士時代・政治家時代に、海千山千の相手との交渉で身につけた交渉術をまとめた本書は、「ハーバード流」とか、「オックスフォード流」といった類の、モノゴトの 結果が出た後で、始まりから終わりの全体を鳥瞰し、ああだこうだと第三者が後付けで解説するような本とは説得力が違う。

ボクは、なになに流類の本も読んだことがあるが、
それで自分がハーバードやオックスフォード風になれた手ごたえはないが、
本書は「交渉」において大変役立つ極意をおしえてくれた。

本書の中で橋下さんも触れているように、「どんな交渉でも、最後は握手で終わることが重要」だ。今後、自分が交渉するにあたり、仮にその交渉が決裂したとしても、お互いの「絶対に譲れないもの」と「譲れるもの」のカードを切りあった上での交渉ならば、人間関係まで壊れることなく握手で終われるだろうと思う。

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