【思い出】会社で出会ったおじさんたち①

新卒で入った会社は、創業60年以上続く専門誌を発行する出版社でした。社員は30人ほどで、あまり社内の新陳代謝はなく、社風はゆるやかでアットホーム。
そういう会社なので、社員の勤続年数は長く(新卒から定年退職まで勤めあげる人が大半!)、また、自然体で振る舞うことが許される雰囲気があるがゆえにクセがあるというか、 ユニークなおじさんが多かった。

トマトジュースのおじさん

まず一人目のおじさん。
稲森さん(仮名・50代前半)は、
毎日、自分のデスクで仕事をしながらカゴメのトマトジュースを飲んでいた。

稲森さんは、ひと口飲むと、まわりに聞こえるくらいの大きな声で、
「うっまっ!」
と独り言をいう。

周り席にいるボクら仕事に集中しているので無視。

稲森さんは、もうひと口飲むと今度は、
「まずっ」
とさらに大きな声でいう。

(どっちだよ‥)

と、誰かがかまってくれるまで、こんな調子である。

毎日トマトジュース

株価が上がるとまた面倒くさい

また、稲森さんは、多少お金持ちらしく、株を運用していた。
なもので、仕事中も会社のパソコンで常に株価をチェックする。
株価の動きが激しい日には、パソコン画面を見ながらときおり

「すっげ!」

と声を上げると、

ぱっと、ボクの方に顔をむけて、

「儲かっちゃった」

と満面の笑みを向けてくる。

「それはよかったですね」としか返しようがない。

仕事して!

やたらと喫煙所に誘ってくる

喫煙室へ行くには、ボクが座っているデスクの近くが通路になっていたため、
ボクの座る席は、タバコを吸う人の通行が多かった。

それで、面倒なことに、稲森さんも喫煙者なのだ。

スタスタスタ ・・・ (足音)

 
 稲森「山ちゃん、一服しない?」

 ボク「あ、いえ、大丈夫です」


 (1時間後)


スタスタスタ・・・(足音)

 
 稲森 「山ちゃん、一服どう?」

 ボク 「いえいえ。大丈夫です」 (タバコ吸わないんで)

 
  (1時間後)


スタスタスタ ・・・ (足音)

 
 稲森 「お、山ちゃん、頑張ってるね。一服行こうか」

 ボク「あの! いま仕事してるんで。ボク、タバコも吸わないですし。。」

 稲森「あー、ごめんごめん。もう言わないからさ。次からは静かに通るよ」

  (1時間後 )


スタスタスタ ・・・ (足音)


 稲森 「は~い! それでは無言で通りま~す」

 ボク「・ ・ ・ ・ 」(このオヤジめ)

その後、ボクは転職して、いくつかの会社に勤めたが、
新卒で入社したときの会社ほど、自由でゆかいなおじさんたちと出会わなかったし、
また会社が楽しいと思ったことがない。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です