「出産立ち会い」体験記(後編)

中編より→
ボクは深夜の病院をでて、この日は妻の実家に泊まった。

そして翌日、入院 5日目。
朝から病院へ行き、妻に付き添った。
この日も「陣痛促進剤」の点滴を打ちながら陣痛を待った。

ときどき助産師が様子を見に来る。
この道40年のベテラン母ちゃんという貫禄だ(すごく頼れる)。

妻の子宮口の開き具合を見て、

「あら、まだ子宮口が開かないわね~」
「覚悟を決めて出てらっしゃい(笑)」

と言って妻のお腹をさすった。

※陣痛によって子宮口は開く。子宮口が10cmくらいまで開くと、赤ちゃんが出てこれるのだが、このときまだ陣痛の初期で、3~4cmしか開いていない

他にも若い助産師さんが熱を測ってくれたり、
看護師が点滴を新しいものに替えたりと必要な処置をしてくれたが
それでもなかなか「本陣痛」が来ないため、子宮口も小さくしか開かない。

昼前に医師が経過を診に来て、
もし今日このまま「本陣痛」がこなければ、帝王切開することになる、と告げられる。

妻は泣いたが、ベテラン助産師さんと若い助産師さんが
励ましてくれる。

ベテランの助産師さんが
「イスに座ってみたらどうかしらね」
といって姿勢を変えてみる。

イスのイメージ(写真=amazon)

そして、看護師さんたちの献身的なサポートの甲斐があって、
ようやく赤ちゃんが出てくる兆しが見えてくる。

陣痛がきた!! しかし仕事でトラブル発生!

ベテランの助産師さんが子宮口に手を入れながら
「うんうん、赤ちゃんが降りてきてるわね。大丈夫よ」
どうやら帝王切開はせずにすみそうである。

しかし、そのときボクのスマホが鳴り出す。

ブーーーツ、 ブーーーツ 、 ブーーーツ 、

(えっ? お客さんから??)

外車メーカーの担当者から電話だ。電話に出てて、要件を聞いた。
(そういえば今日、ハガキの納品だったな‥)
嫌な予感がした。

「いま横浜のディーラーから連絡があったんだけど、納品されたDMハガキ、神戸のハガキが届いちゃってるみたいなんだよね。もしかすると、名古屋、京都、大阪のも間違えてるんじゃない??」

ボクは、その日、納品したはずの5ヶ所すべてのディーラーへ電話した。
すると、 (仮にメルセデスベンツとします)、

「メルセデスベンツ 横浜」 には、「メルセデスベンツ 神戸」が届いてしまい、
「メルセデスベンツ 神戸」 には、 「メルセデスベンツ 京都」が届いてしまい、
「メルセデスベンツ 京都」には、 「メルセデスベンツ 名古屋」が届いて…

という、メチャクチャなことになっていた。
後からミスの原因を調査したら、発送の担当者が勝手な思い込みで、
5ヶ所すべて同じ中身だろうと判断し、納品先と中身を紐付けしないまま発送してしまっていたらしい。

(うわあ‥このタミングかよ‥)

嫁のお母さんとお婆ちゃんが登場

バタバタと対応に追われていたとき、

「あら、こんにちは」

と、嫁のお母さん、お婆ちゃんがお見舞いにやってきた。
ボクに「お昼食べにいこう」と言って、病院の食堂まで連れてってくれたのだが、
嫁は陣痛室でウンウン唸りはじめているし、仕事のトラブルも対応中で、
気もそぞろにランチを食べた。

(二人とも出産経験者だから落ち着いたものだなあ‥汗)

ランチの後、電話もパソコンも操作できる場所でトラブル処理した。
各エリアのディーラーの人が、間違えて届いたモノを本来の納品先へ、親切にも発送する対応をとってくれたのだ(感謝しかありません)。

急いで陣痛室に戻ると、出産もいよいよ佳境に入っていた。

分娩台に移動し、いよいよ出産へ

看護師さんが
「旦那さんも戻ってきたわね。それじゃ、分娩台に移動しますよ」
と言って妻は分娩台へ移動する。

分娩室に移動すると、
助産師、看護師、産婦人科医師が出産のための準備を整えていた。
嫁よりも若いんじゃないかという女医さんだ。

子宮口が10cmほど開き、赤ちゃんの頭が出口の近くまで降りてくると、
後は、陣痛の波に合わせて、いきむ(踏ん張る)。

嫁が「あ、(陣痛が)来た」というと、

助産師が「はい、いきんでー!」「もうすぐですよー」といって、
子宮口から赤ちゃんを引っ張り出そうとする。

医師が「裂傷を防ぐために、会陰切開します」といって、
麻酔をして入り口付近を切開する。

それでまた妻が「あ、(陣痛が)きた」といって、いきむと

おぎゃー!!

手足をバタバタさせながら、 大声で泣いている。生きている。

(びっくりした)

嬉しいとか感動より、まず驚きだった。”そこにいなかったイキモノが突然に現れた” からだ。まるで手品みたい。

妻も同じく、びっくりしたらしいです。
それて、赤ちゃんが出てくる瞬間に、陣痛はウソのように止まるらしいです(不思議)。

生まれたて

ちなみに、妻の場合は「それほどには痛くなかった」みたいです(確かに一度も叫ばなかった。人それぞれですね)。

自分には耐えられない。うちの母ちゃんはスゴイ。本当によく頑張ってくれました。

胎児を介して夫婦はDNAで結ばれる(衝撃)

出産に関する知識をくれた本 ミシマ社 胎児のはなし

妻の妊娠、そして出産の立ち会いを通して、
いままで興味を持つことがなかった(持ちようがなかった)妊娠と出産について
たくさんのことを知ることができた。

とくに、「胎児のはなし」という本で、非常に興味深い内容が書かれており、
特に印象的だったのが、 以下のような内容だ(端折ってます)。

妊娠を通して、胎児と母体はDNAのやりとりをします。
妊娠中の母親の血液を調べれば、胎児の性別がわかるように、
胎児のDNAもまた、母体に入っていくのです。

そして、胎児のDNAの半分は、父親のものです。

つまり、胎児を介して父親のDNAは母親に入っている、
夫婦はDNAレベルで血の繋がりができるという衝撃の事実。

仕事についても考えさせられた

世の中には社会に必要な、万人に欠かせない職業、
農業・畜産・鉄道・貨物・インフラ系などありますが、
ボクの中で一番に思い浮かぶ職業は、医療に関わる仕事です。

出産の現場を目の当たりにして、
そこに従事する職員の方たちには、本当に頭が下がる思いでした。
人の命に関わるような業務に 24時間体制でつくなど
よほどの精神力がないと続けられないです。

自分が仕事で生み出している付加価値は、取るに足らないな、
と思ってしまった。

それなら思うままやったらいいじゃないか、と。

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